【Z・CD特別情報】

 

 

夏の増刊号・BDオペラ特集号 No.1-1

   ブルーレイ・オーディオの特徴の一つに、オペラのような長時間の音楽が一枚のディスクに入ることである。SP時代には度々架け替えなければならなかったことを考えると、長足の進歩である。ゆっくりと、あたかも歌劇場で鑑賞しているように楽しむことができる。
ほとんどのディスクがCDとBDが同梱されているので、ブルーレイ・オーディオとCDの比較ができる。

録音時期を見ると、BD仕様にリメークされたものと思われる。リメークとはいえ、カラヤンの歌劇『ボエーム』は、BD録音ならではという「奥行感」などは舞台そのものを体現させてくれる。そこでオペラのBD特集をしてみた。

実を言うと、この『ボエーム』を聞くまでは、BDのオペラなどはあまり期待していなかった。しかし、期待以上である。
カラヤンの歌劇『ボエーム』は教会での録音にもかかわらず、舞台録音そのものを感じさせる。

ここにあげた歌劇が全てとは言わないが、BDによるオペラは大変に聞きごたえがある。特に、もう聞くことのできないパヴァロッティの美声は聞く者の心をわしづかみにし、ミューズの世界へと誘う絶妙な喜びは何度聞いても大変に懐かしいし、飽きることがない。
今回の選曲が、パヴァロッティ、サザーランドと偏りのある歌手になったことはお許しを頂きたい。

 

ヴェルディ:歌劇『リゴレット』全曲 
リチャード・ボニング&ロンドン交響楽団、

ルチアーノ・パヴァロッティ、シェリル・ミルンズ、他(1971 ステレオ)(2CD+ブルーレイ・オーディオ)

 

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長年デッカのバランス・エンジニアを務めるフィリップ・サイニーが、アビー・ロード・スタジオで新たにリマスター。2枚のCDに加えて、ブルーレイ・オーディオ・ディスクには24bit音源を収録。パッケージはオリジナル・デザインによるハードカヴァー・ブック仕様で、リブレット、あらすじ、オリジナル・ライナーノーツ、レアな写真などが掲載されている(英・独・仏語のみ)。
タイトルロールのリゴレット役をミルンズが過剰なまでの表現でドラマティックに演じる一方、悲劇の直接的原因となるマントヴァ公役はパヴァロッティが朗々と歌い上げ、不幸なジルダ役はサザーランドがまるで器楽のようなピュアな音色で儚く美しく聴かせる。

《あらすじ》
時と場所: 16世紀、マントヴァ。
前奏曲
2分程度の短い曲。
第1幕
第1場、幕が開くと公爵邸の大広間。
舞踏会が催され、舞台裏のバンドが賑やかに音楽を奏でている。マントヴァ公爵は最近日曜日の度に教会で見かける美しく若い娘のことが気になっているが、まずはチェプラーノ伯爵夫人を今夜の獲物と定め、次から次へと女性を手玉に取る愉しみを軽快なバッラータ(13世紀後期から15世紀にかけて使われたイタリアの詩形、楽式)『あれかこれか』Questa o quellaを歌う。
やがて伯爵夫人が現れ、公爵は言葉巧みに口説き落とし別室へと連れて行く。

夫人の行方を捜し歩くチェプラーノ伯爵はリゴレットによって笑いものにされる。
一方、リゴレットの娘ジルダの存在を嗅ぎ付け、それがせむし男リゴレットの情婦だと勘違いした廷臣たちは噂話を続けている。

そこへ老人モンテローネ伯爵が、実の娘チェプラーノ伯爵夫人の名誉が傷つけられたとして抗議に現れる。
リゴレットは彼もまた嘲笑の的にしようとするが、モンテローネは公爵とリゴレットに痛烈な呪いの言葉をかけ、リゴレットは内心恐怖に打ち震える。

第2場、家路へ急ぐリゴレットだが、モンテローネの呪いはその念頭を去らない。

殺し屋スパラフチーレが現れ、「美しい妹が相手を誘い出し、自分が刺し殺す。
半分は前金で頂き、残金は殺してから」と自分の殺し屋稼業を説明するが、リゴレットは「今は用はない」と彼を立ち去らせる。
リゴレットは「俺はこの舌で人を殺し、奴は短剣で殺す」と、モノローグ『二人は同じ』Pari siamoを歌う。
帰宅したリゴレットを美しい娘ジルダが迎える。彼女は父親の素性、亡くなったと聞かされている母親はどんな女性だったか、などを矢継ぎ早にリゴレットに尋ねるが、ジルダにだけは世間の醜さを見せたくないと考えるリゴレットは、教会に行く以外は外出するなと厳命して去る。

リゴレットと入れ替わりに公爵が現れる。教会で見かけた娘はこのジルダだったのだ。彼は「自分は貧しい学生」と名乗り熱烈な愛情を告白する。初めは驚くジルダだったが、うぶな彼女は百戦錬磨の公爵の術策の前には無力、生まれて初めての恋愛感情に陶然とする。
愛情を確かめ合う2重唱の後公爵は去る。
独り残るジルダは公爵のこしらえた偽名「グヮルティエル・マルデ」をいとおしみ、アリア『慕わしき人の名』Caro nome(可憐で叙情的なこのアリアは残酷なシチュエーションの中で、そうとは気づいていない少女の初恋の心情をもたらしている。)を歌う。

この時リゴレット宅の周りには廷臣たちが集結していた。彼らはジルダをリゴレットの情婦と思い込んでおり、彼女を誘拐して公爵に献呈すればリゴレットに恰好の復讐になると考えていた。
リゴレットもそこに戻ってくるが、廷臣たちは「今からチェプラーノ伯爵夫人を誘拐する」とリゴレットを騙し、言葉巧みにリゴレットに目隠しをしてしまう。
彼が目隠しをとったときは既に遅く、ジルダは誘拐されてしまう。リゴレットは、自分にモンテローネの呪いが降りかかった、と恐れおののく。

第2幕
ジルダが行方不明になったとの報は公爵にも伝わり、いつもは単に好色な彼も、珍しく殊勝にもその身を案じるアリア『あの娘の涙が見えるようだ』Parmi veder le lagrimeを歌う。
しかし廷臣たちが、若い娘を誘拐し、殿下の寝室に待たせております、と自慢話を始めると、それがジルダであると悟り浮き浮きと寝室に去る。
入れ替わりにリゴレット登場、道化話で態度を取り繕いながら娘の所在を探し回る。公爵夫人の小姓と廷臣たちの会話を小耳にはさみ、ジルダが公爵と共に寝室にいると確信したリゴレットは、娘の返還を訴える劇的なアリア『悪魔め、鬼め』Cortigiani, vil razza dannataを歌う。

ジルダが寝室を飛び出してきてリゴレットと再会する。彼女は、貧しい学生と名乗る男には教会で初めて出会ったこと、裏切られたと知った今でも、彼への愛情は変わらないことを父親に切々と訴える。一方リゴレットは、モンテローネに替わって自分こそが公爵に復讐するのだと天に誓う。

 

第3幕
ミンチョ河畔のいかがわしい居酒屋兼旅荘。
中にはスパラフチーレと、騎兵士官の身なりをした公爵、外にはリゴレットとジルダ。
公爵に対する未練を捨て切れないジルダに、リゴレットは「では真実を見るのだ」と壁穴から中を覗かせる。
公爵は、女はみな気まぐれ、と、有名なカンツォーネ『女は気まぐれ(女心の歌)』La donna è mobileを歌う。

スパラフチーレの妹マッダレーナが現れ、公爵の気を惹く。マッダレーナを口説く公爵、色目を遣ってその気にさせるマッダレーナ、外から覗いて嘆き悲しむジルダ、娘の名誉のため改めて復讐を誓うリゴレットの4人が、これも有名な4重唱『美しい愛らしい娘よ』Bella figlia dell'amoreを繰り広げる。
リゴレットは娘に、この街を去りヴェローナに向けて出発せよと命令する。

残ったリゴレットはスパラフチーレに、公爵を殺し死体を自分に渡すことを依頼し、前金の金貨10枚を渡し去る。
酔った公爵は鼻歌を歌いつつ居酒屋の2階で寝込んでしまう。

外は嵐。
公爵に惚れたマッダレーナは兄に命だけは助けてやってくれと願う。
それは殺し屋の商道徳に反すると反対していた兄も妹の願いに不承不承従い、真夜中の鐘が鳴るまでに他人がこの居酒屋を訪れたら、その者を身代わりに殺すことに決定する。
ヴェローナ行きの旅装に身を包んだジルダは公爵を諦め切れず再び登場、2人の会話を聞き、自分がその身代わりとなることを決断する。嵐が一段と激しくなる中、ジルダは遂に意を決して居酒屋のドアを叩き、中に招き入れられる。
嵐が次第に静まる頃リゴレットが戻ってきて、残金と引換えに死体入りの布袋を受け取る。
ミンチョ川に投げ入れようとするとき、マッダレーナとの愉しい一夜を終えた公爵が(舞台裏で)あの『女は気まぐれ(女心の歌)』を歌いながら去るのを聞きリゴレットは驚く。

慌てて袋を開けるとそこには虫の息のジルダ。彼女は、父の言いつけに背いたことを詫びつつ、愛する男の身代わりになり天に召される幸福を歌って息絶える。残されたリゴレットは「ああ、あの呪いだ!」と叫んで、幕。

《有名なアリア・重唱等》

  1. 『あれかこれか』Questa o quella、

  マントヴァ公爵のバッラータ(第1幕第1場)

  1. 『二人は同じ』Pari siamo、

 リゴレットのモノローグ(第1幕第2場)

 

  1. 2重唱『それは心の太陽』È il sol dell'anima、

    マントヴァ公爵・ジルダ(第1幕第2場)

  1. 『慕わしき人の名』Caro nome、

 ジルダのアリア(第1幕第2場)

・『あの娘の涙が見えるようだ』Parmi veder le lagrime、
マントヴァ公爵のシェーナとアリア(第2幕)

  1. 『悪魔め、鬼め』Cortigiani, vil razza dannata、

 リゴレットのアリア(第2幕)

  1. 『女は気まぐれ(女心の歌)』La donna è mobile、

 マントヴァ公爵のカンツォーネ(第3幕)

  1. 4重唱『美しい愛らしい娘よ』Bella figlia dell'amore、

マントヴァ公爵・マッダレーナ・リゴレット・ジルダ(第3幕)

《パヴァロッティ・プロフィール》
ルチアーノ・パヴァロッティ(Luciano Pavarotti)さんは、1935年10月12日、北イタリアのモデナに、パン焼職人でアマチュア・テノール歌手でもあった父親のもとに生まれた。
同郷の名ソプラノ、ミレッラ・フレーニとは幼なじみで、同じ乳母によって育てられたという逸話は有名。父親とともに地元のコーラスで歌い、師範学校を卒業後、声楽をテノール歌手アッリーゴ・ポーラに師事している。

1961年、レッジョ・エミーリアでおこなわれた声楽コンクールで優勝し、同年の4月29日、同地の市立劇場で『ボエーム』のロドルフォ役を歌ってオペラ・デビューを飾る。
このロドルフォ役はパヴァロッティの十八番となり、1963年のウィーン国立歌劇場とロンドンのロイヤル・オペラ・ハウス、1965年のミラノ・スカラ座へのデビューもこの役であった、1964年には英デッカ社にオペラ・アリア集を録音、レコード・デビューも果たしている。

アメリカへは1965年に進出(マイアミ)、1968年にはニューヨークのメトロポリタン歌劇場に、やはりロドルフォ役でデビューしている。

1972年2月、メトロポリタン劇場で上演されたドニゼッティの歌劇『連隊の娘』に出演、パヴァロッティはトニオ役のアリアでハイC(高いハ音)を9回、苦もなく歌って喝采を浴びて名声を決定付けた。

80年代からは音楽コンクールを主催し、若手声楽家の育成にも乗り出した。
90年代以降の活動はオペラの領域を越えて展開。ニューヨークのセントラル・パークやロンドンのハイド・パークでの大規模な野外コンサートなども実現させ、ポピュラー歌手を思わせる音響設備の使用や高額な入場料でも論議を呼んだが、音楽をより広い聴衆へ伝えようとするその活動は衰えることがなかった。
有名なものでは、1990年7月、サッカー・ワールド・カップ決勝前夜のローマでプラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスとともに特設舞台に立った、いわゆる「3大テノール」公演の大成功があげられる。
この公演は、1994年、1998年、2002年のワールド・カップでもおこなわれた。
2007年9月6日、モデナの自宅にて腎不全により死去。

《サザーランド・プロフィール》
ジョーン・サザーランド(サザランド)は、1926年11月7日は、オーストラリアのシドニー郊外ポイントパイパーに誕生。幼少のころから歌うことが大好きだったサザーランドは、メゾソプラノの美声の持ち主でもあった母から歌の手ほどきを受け、のちにシドニー音楽院に進んで本格的に声楽を学び、1947年、演奏会形式上演での『ディドーとエネアス』で歌手デビュー。
その後、ロンドンの王立音楽アカデミーでも学び、1952年、『魔笛』の第一の侍女役でロイヤル・オペラ・ハウスにデビューする。
当初は、『仮面舞踏会』のアメリア役や、『フィガロの結婚』の伯爵夫人役、『魔弾の射手』のアガーテ役、『ホフマン物語』の三役、『カルメン』のミカエラ役、『マイスタージンガー』のエヴァ役、『オテロ』のデズデモーナ役、ティペット『真夏の結婚』のジェニファー役などドラマティックからリリックまで多言語の幅広い役柄をこなしているが、1954年、指揮者リチャード・ボニングとの結婚を機に大きな転機が訪れることとなる。

リチャード・ボニング[1930- ]は、最初ピアニストを目指して勉強し、14歳でリサイタル・デビューするほどの腕前でしたが、サザーランドと出会ってオペラに深く魅せられ、指揮者に転向する道を選ぶこととなる。ボニングはベルカント・オペラと指揮について猛勉強して研究を重ね、サザーランドに助言を与え、歌唱指導にあたった。その結果、もともとはワーグナー・ソプラノを目指していたという彼女の歌はベルカント仕様に大きく変化を遂げることとなる。

成功のきっかけは、1959年コヴェントガーデンでのセラフィン指揮による『ランメルモールのルチア』。彼女はここで、ルチア役を素晴らしい歌唱でこなして驚異的な大成功を収めることになる。
その声量はとても大きく、音域も広大でしかもムラがなく色彩も豊かであり、コロラトゥーラのテクニックも完璧という彼女の歌唱は、旧来のコロラトゥーラ歌手のイメージを大きく上回る真のベルカント歌手の名にふさわしい実に見事なものであった。

このコヴェントガーデンでの大成功を受け、1961年にはメトロポリタン歌劇場とミラノ・スカラ座でもルチアを歌って高い評価を獲得。翌1962年には、ロッシーニの埋もれていた傑作『セミラーミデ』の主役を歌っての蘇演の成功が、同作品をレパートリーとして定着。

《収録情報》
● ヴェルディ:歌劇『リゴレット』全曲

ルチアーノ・パヴァロッティ(マントヴァ公)
シェリル・ミルンズ(リゴレット)
ジョーン・サザーランド(ジルダ)、

アンブロジアン・オペラ・コーラス
ロンドン交響楽団
リチャード・ボニング(指揮)

録音時期:1971年6月
録音場所:ロンドン、キングズウェイ・ホール
録音方式:ステレオ(アナログ/セッション)

 

 

ドニゼッティ:歌劇『ランメルモールのルチア』
 ジョーン・サザーランド、ルチアーノ・パヴァロッティ

(2CD+ブルーレイ・オーディオ)


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サザーランド、パヴァロッティの黄金コンビの『ルチア』
リチャード・ボニング&コヴェント・ガーデン王立歌劇場


長年デッカのバランス・エンジニアを務めるフィリップ・サイニーが、アビー・ロード・スタジオで新たにリマスター。2枚のCDに加えて、ブルーレイ・オーディオ・ディスクには24bit音源を収録。

1959年、コヴェント・ガーデンでの『ルチア』のセンセーショナルな成功により、一夜にして大スターとなったサザーランド。その大成功から12年を経ておこなわれたこのレコーディングでは、さらに深化したサザーランドを中心に、パヴァロッティ、ミルンズ、ギャウロフが全盛期の見事なノドを披露しています。音質もアナログ完成期のデッカによるセッション録音だけあって、細部の質感までリアルに再現されており、ライヴ録音では聴くことのできない繊細な表情の変化も楽しめる。

《オペラの概略》
ランメルモールのルチア』(伊:Lucia di Lammermoor)は、ガエターノ・ドニゼッティが1835年に作曲したイタリア語オペラ。
同年9月26日にナポリのサン・カルロ劇場で初演された。
台本はサルヴァトーレ・カンマラーノによる。

政略結婚によって引き裂かれた恋人たちの悲劇を描く。正気を失ったヒロインが延々と歌い続ける「狂乱の場」で有名である。

この作品の原作は、スコットランドの作家ウォルター・スコットの小説『ラマムアの花嫁』(英:The bride of Lammermoor、1825年)である。
意に染まぬ婚約を強いられた花嫁が花婿を刺した事件を小説化したもの。この事件は1669年にスコットランドで実際に起きたもので、スコットは舞台を18世紀はじめに移し、恋人たちの名前をルーシーとエドガーとした。

スコットの諸作品はヨーロッパで広く読まれており、ロッシーニの『湖上の美人』やビゼーの『美しきパースの娘』など、さまざまなオペラの原作となった。ドニゼッティ自身も1829年にスコットの小説を原作としたElisabetta al castello di Kenilworthを作曲している。
ドニゼッティは1835年に『ラマムアの花嫁』を原作として本作を書き上げ、7月6日に完成させた。9月26日からの上演は大成功を収めた。

《あらすじ》
第1部「出発」全1幕
エンリーコの城内。ノルマンノが人々とともに、名誉のために忌まわしい秘密を暴くのだと歌う。エンリーコが現れ、一族を救うために妹のルチアを結婚させたいが、彼女が拒んでいると語る。ライモンドが彼女は母の死を悲しんでいるのだととりなすが、ノルマンノは彼女がある男と恋に落ち、密会を重ねていると告げる。人々が戻り、予想通りエドガルドを見つけたと報告する。エンリーコは激怒する。
泉のある庭園。ハープの調べに乗ってルチアが登場する。ルチアはアリーサに、昔ある男が恋人を刺して泉に沈めた、自分はその女の亡霊を見た、と語る。アリーサは不吉な恋はやめるようにと忠告するが、ルチアはエドガルドへの愛を歌い上げる。エドガルドが現れ、急にフランスに行くことになったと語る。2人は結婚を誓い、指輪を交換する。
第2部「結婚証明書」全2幕
第1幕
エンリーコの居室。エンリーコはノルマンノと謀って、エドガルドの不実を証明する偽の手紙を用意する。
アルトゥーロとの結婚を拒むルチアに、エンリーコは偽の手紙を見せる。動揺するルチアに向かってエンリーコは、一族を破滅から救うためにアルトゥーロと結婚するよう強要する。
ライモンドが現れ、エドガルドからの手紙の返事がないので、あきらめて結婚するようルチアを説得する。

城内の大広間。結婚の祝宴にアルトゥーロが迎えられ、人々は彼をたたえる歌を歌う。ルチアは、結婚の誓約書に署名してしまう。
そこにエドガルドが乱入し、有名な六重唱となる。エドガルドはルチアの署名を見て激怒し、ルチアから指輪をもぎとる。混乱のうちに幕となる。

2
エドガルドの城。嵐の音楽のあとにエンリーコが訪れ、一族の敵対関係を解決するために決闘を申し込む。二人は夜明け前に墓地で決闘すると約束する。
エンリーコの城。結婚の祝宴が続いている。ライモンドが現れて祝宴を止め、ルチアがアルトゥーロを刺し殺したことを告げる。血まみれになり、正気を失ったルチアが現れ、有名な「狂乱の場」となる。
ルチアはエドガルドとの結婚の幻想を延々と歌い上げる。エンリーコが戻ってくるが、ルチアは天国でエドガルドと再会することを夢見て、倒れる。
墓地。エドガルドは、先祖の墓の前で絶望の歌を歌う。人々が現れ、ルチアが死に瀕していると伝える。死を告げる鐘が鳴り、ライモンドがルチアは死んだと伝えると、エドガルドは剣を自分の胸に刺して後を追う。

《収録情報》
● ドニゼッティ:歌劇『ランメルモールのルチア』全曲

 ジョーン・サザーランド(ルチア)
ルチアーノ・パヴァロッティ(エドガルド)
シェリル・ミルンズ(エンリーコ)
ニコライ・ギャウロフ(ライモンド)、他
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団
リチャード・ボニング(指揮)

 録音時期:1971年6月28日~7月16日
録音場所:ロンドン、キングズウェイ・ホール
録音方式:ステレオ(アナログ/セッション

 

 

 

 

 

 

 

プッチーニ:歌劇『トゥーランドット』全曲 
メータ&ロンドン・フィル、
パヴァロッティ、サザーランド、他
(1972 ステレオ)(2CD+ブルーレイ・オーディオ)

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パヴァロッティのデッカ録音50周年を記念した96kHz/24-bitリマスター・エディション。
プッチーニが最後にたどり着いたオペラは、おとぎ話を人間ドラマに昇華する歌の魅力と、絢爛豪華なオーケストラ・サウンドを備えた究極のオペラ。
メータのアルバムは、このオペラ初の高音質録音として話題になったもので、今は無きキングズウェイ・ホールに展開するロンドン・フィルの音響はスペクタクル要素も満載です。

澄んだ声が浮き世離れした姫の姿にふさわしいともいえるトゥーランドット役のサザーランドに、張りのある声で情熱的なカラフ役を演じるパヴァロッティ、リリカルな美声で自己犠牲に果てるリュー役を演じるカバリエ、朗々とした声でおだやかなティムールを演じるギャウロフ、そして通常は貧相に歌われる皇帝アルトゥムを気品ある声で演じるピアーズなど歌も高水準。
こうしたメータ指揮による演奏を、アナログ全盛期の優秀な録音で精巧に仕上げたデッカのスタッフは、プロデューサーがレイ・ミンシャルとマイケル・ウールコック、エンジニアがケネス・ウィルキンスンとジェイムズ・ロックという面々である。
LP時代から音の良さで知られたこの『トゥーランドット』が、今回のリマスターでどのような音質になるか楽しみな高音質化企画の登場。(HMVより引用)

《あらすじ》
時と場所:いつとも知れない伝説時代の北京
第1幕
宮殿(紫禁城)の城壁前の広場。役人が群衆に宣言する「美しいトゥーランドット姫に求婚する男は、彼女の出題する3つの謎を解かなければならない。
解けない場合その男は斬首される」今日も謎解きに失敗したペルシアの王子が、月の出とともに斬首されるべく、喝采する群衆の中を引き立てられてくる。
敗戦により、国を追われて放浪中の身であるダッタン国の王子カラフは、召使いのリューに手を引かれながらさ迷う盲目の父、ダッタン国の元国王ティムールを発見し、3人は互いに再会を喜ぶ。

ペルシア王子処刑の様子を見にトゥーランドット姫が広場に現れ、カラフは一目見てその美しさの虜となる。
ティムール、リュー、そして宮廷の3大臣ピン、ポン、パンが思いとどまるよう説得するが、カラフはトゥーランドットの名を叫びながら銅鑼を3回打ち鳴らし、自らが新たな求婚者となることを宣言する。
第1幕では、トゥーランドット姫は一切声を発さない。
第2幕
ピン、ポン、パンの三大臣が軽妙なやりとりで姫とカラフの噂話をしている。そのうち、帝の出御となり群衆が集まる。
万歳の叫び声の中、皇帝アルトウームがカラフに無謀な試みをやめるよう説得するがカラフは耳を貸さない。こうして姫が冷やかな表情で出てくる。

カラフの謎解きの場面。
トゥーランドット姫は、何故自分がこのような謎を出題し、男性の求婚を断ってきたのかの由来を改めて述べる「かつて美しいロウ・リン姫は、異国の男性に騙され、絶望のうちに死んだ。
自分は彼女に成り代わって世の全ての男性に復讐を果たす」。

第一の謎「毎夜生まれては明け方に消えるものは?」カラフ曰く「それは希望」第二の謎「赤く、炎の如く熱いが、火ではないものは?」「それは血潮」カラフは2つまでも正解を返す。

最後の謎「氷のように冷たいが、周囲を焼き焦がすものは?」カラフは暫く悩むが、これも「トゥーランドット!」と正答する。

謎がことごとく打破されたトゥーランドット姫は父アルトゥーム皇帝に「私は結婚などしたくない」と哀願するが、皇帝は「約束は約束」と娘に翻意を促す。
カラフは姫に対して「それでは私もたった一つの謎を出そう。私の名は誰も知らないはず。明日の夜明けまでに私の名を知れば、私は潔く死のう」と提案する。

第3幕
北京の街にはトゥーランドット姫の命令が下る「今夜は誰も寝てはならぬ。(パヴァロッティの名演に心に残る名曲)
求婚者の名を解き明かすことができなかったら住民は皆死刑とする」カラフは「姫も冷たい部屋で眠れぬ一夜を過ごしているに違いない。

夜明けには私は勝利するだろう」とその希望を高らかに歌う。
ピン、ポン、パンの3大臣は多くの美女たちと財宝を彼に提供、姫への求婚を取り下げるよう願うが、カラフは拒絶する。
ティムールとリューが、求婚者の名を知る者として捕縛され連行されてくる。
名前を白状しろ、とリューは拷問を受けるが、彼女は口を閉ざし、衛兵の剣を奪い取って自刃する。
リューの死を悼んで、群衆、3大臣など全員が去り、トゥーランドット姫と王子だけが残される。

王子は姫に熱い接吻する。
姫はリューの献身を目の当たりにしてからその冷たい心にも変化が生じており、彼を愛するようになる。
ここで王子ははじめて自らの名がカラフであることを告げる。「名前がわかった」と姫は人々を呼び戻す。

トゥーランドットとカラフは皇帝の玉座の前に進み出る。姫は「彼の名は……『愛』です」と宣言する。
群衆は愛の勝利を高らかに賛美、皇帝万歳を歌い上げる中、幕。

 

 

《収録情報》
● プッチーニ:歌劇『トゥーランドット』全曲

ジョーン・サザーランド(トゥーランドット/ソプラノ)
ルチアーノ・パヴァロッティ(カラフ/テノール)
モンセラート・カバリエ(リュー/ソプラノ)
ニコライ・ギャウロフ(ティムール/バス)
ピーター・ピアーズ(皇帝アルトゥム/テノール)
トム・クラウゼ(ピン/バリトン)
ピエル・フランチェスコ・ポーリ(パン、ペルシャの王子/テノール)
ピエロ・ディ・パルマ(ポン/テノール)
サビン・マルコフ(役人/バリトン)
ウォンズワース・スクール少年合唱団
ラッセル・バージェス(合唱指揮)
ジョン・オールディス合唱団
ジョン・オールディス(合唱指揮)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ズービン・メータ(指揮)

録音時期:1972年8月
録音場所:ロンドン、キングスウェイ・ホール
録音方式:ステレオ(アナログ/セッション)

 

プッチーニ:歌劇『トスカ』全曲 No.1-2
ヘルベルト・フォン・カラヤン&ウィーン・フィル、レオンティーン・プライス、ディ・ステーファノ、他(1962 ステレオ)(2CD+ブルーレイ・オーディオ)

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レオンティーン・プライス、ジュゼッペ・ディ・ステーファノ
ヘルベルト・フォン・カラヤン&ウィーン・フィル

最新リマスター、Blu-ray-Audioディスクも同梱
20世紀を代表するプリマ、レオンティーン・プライスと、マリオ・デル・モナコと並ぶイタリア・オペラ黄金時代のテノール、ジュゼッペ・ディ・ステーファノという夢の顔合わせによる名盤。
《作品の成立と上演》
全3幕で、台本はルイージ・イッリカとジュゼッペ・ジャコーザの2人が書いた。初演は1900年1月14日、ローマのコスタンツィ劇場で行われた。

オペラ台本は、1889年パリで上演されていたヴィクトリアン・サルドゥの戯曲に基づく。

プッチーニは同年ミラノでサラ・ベルナール演ずるこの劇に接し、直ちに馴染みの編集者リコルディにサルドゥから権利を買うよう依頼したが、1893年に作曲家アルベルト・フランケッティのものとなってしまう。
イルリカが台本を書き、1894年10月、フランケッティ、リコルディとヴェルディはサルドゥに会い、台本を贈った。ヴェルディはこの悲劇作品にいたく魅せられていたが、この作品の結末を変更しない限り作曲するつもりはなかった。

数ヵ月たって、とうとうフランケッティは自分ではこの作品に作曲することは不可能と認めたため、ジュリオ・リコルディはプッチーニに作曲を依頼した。彼は感情を害していたのでヴェルディの仲介により、ようやくこれを受け入れさせることが出来た。プッチーニは『ラ・ボエーム』の作曲を終えた後の1896年から作曲に取り掛かった。リコルディは台本作成のためジュゼッペ・ジャコーザをルイージ・イッリカの共同執筆者に配した。しかしジャコーザはこの作品が気に入らなかったため、彼の韻文の実力を発揮することが出来ず、サルドゥと何度か論争を起こした。プッチーニのほうでも、2人の台本作家にリコルディまで巻き込んだ議論の末、彼らが第3幕に取り入れようとした「ラテン聖歌」をわずか18小節の二重唱「新しい希望に魂は勝ち誇って」にまで短縮させたりした。

3年にわたる困難な共同作業の末、1899年10月に作品が完成した。ローマ市を舞台にした作品だったので、初演はこの永遠の都のコスタンツィ劇場で行われることに決まった。準備は長期間でトラブルもあり、多くの好奇心をひきつけた。
出演は、エリクレア・ダルクレー(ソプラノ)がトスカを、エミーリオ・デ・マルキ(テノール)がカヴァラドッシを、エウジェニオ・ジラルドーニ(バリトン)がスカルピアを歌った。また、レオポルド・ムニョーネが総監督を行った。マルゲリータ王妃とペロー首相に加え、ピエトロ・マスカーニ、フランチェスコ・チレア、フランケッティ、ズガムバーティなど多数の作曲家が聴衆に加わった。

『トスカ』と前作『ラ・ボエーム』の作品の趣は驚くほど異なったにも関わらず、上演は完璧な成功だった。批評家の評価は芳しくなかったが、聴衆は熱狂的にこれを受け入れた。

《あらすじ》
第1幕
逃亡した政治犯アンジェロッティが隠れ家を求め、彼の一族が礼拝堂を持つ聖アンドレア・デラ・ヴァレ教会にやってくる。

ここには妹のアッタヴァンティ侯爵夫人がやってきて兄の解放を祈っていた。その際彼女は気づかなかったが、画家マリオ・カヴァラドッシが教会の注文で描いているマグダラのマリア像のモデルにしていた。
一族の礼拝堂に隠れるとすぐに堂守が、続いてカヴァラドッシが登場する。
堂守は画家が絵筆を洗うのを手伝う。カヴァラドッシはちょっと仕事を休み、ポケットに持っていたメダルを見つめる。このメダルはトスカの肖像が描いてあり、彼は描きつつある肖像の青い目に金髪のモデルと、黒い目に茶色の髪のトスカとを比較して歌う(妙なる調和)。

堂守はカヴァラドッシのアリアの間、絵のモデルが礼拝に来る夫人であることに気づき呆れて、「ふざけるなら俗人にして、聖人は敬ってくれよ」と合いの手で歌い、画家に促されて退場する。

カヴァラドッシは一人になるが、物音でアンジェロッティのいることに気づく。彼は旧知の画家と知って隠れ場所から出てきて、サンタンジェロ城(ローマ教皇領の牢獄)から逃げ出してきたことを話す。
そこへトスカが外から「マリオ!」と呼ぶので、カヴァラドッシは彼に飲み物を与えて隠れるように言い、アンジェロッティは再び礼拝堂に身を隠す。

トスカはマリオとその夜遅く会う約束をするため来たのだが、ドアの外から話し声を聴き、カヴァラドッシの落ち着かない態度を見て、嫉妬心から彼が誰か他の女性との密会をしていたと疑う。
カヴァラドッシを別荘でのデートに誘う(緑の中の二人の家にいきましょう)が、彼が描いた女性の顔を見てその疑いは確信に変わる。しかし、マリオの説明を聞いてその場は納得し、肖像の眼の色を黒にすることと、夜に会う約束をしてその場を去る。

アンジェロッティが再び現れ、脱出計画を話し合う。カヴァラドッシは彼に自分の別荘の鍵を渡し、アンジェロッティは妹が祭壇に隠していた女性の服を着て脱出するというものだった。
その時サンタンジェロ城で砲声が響き、アンジェロッティの逃亡が発覚したことを告げる。彼は急いで逃げ、画家も同行する。

堂守が大勢の少年合唱隊や待者ともに戻ってくる。彼らはナポレオン軍がマレンゴの戦闘に敗れたという誤報を信じ、神に感謝してテ・デウムを歌う。
そこへ警視総監スカルピアが副官スポレッタおよび逃亡した囚人を捜査する部下を何人か従えて登場する。
聖堂の礼拝堂で、伯爵夫人の扇と空になった籠を見つけ、疑いを抱く。

彼は疑い深く堂守を尋問すると、カヴァラドッシが礼拝堂の鍵を持っていないこと、彼は食事を食べないといっていたことがわかる。

そこへ疑い深いトスカが戻ってくる。教会は人で溢れ、枢機卿がテ・デウムの準備をする。スカルピアはトスカの様子を物陰から伺ったあと、彼女に扇を見せて嫉妬心を煽ると、彼女は立腹しその場を去る。
スカルピアは部下に彼女のあとをつけるように命じると、トスカに対する恋心を情熱的に歌う。
教会ではテ・デウムが始まり、彼もその祈りに和しつつ、目指す男とトスカを二人とも手に入れるのだと歌う。

第2幕
スカルピアが公邸としているファルネーゼ宮殿で夕食を取っている。外では戦勝祝賀会の歌声が聞こえる。
彼は家来にトスカをリサイタル終了後に呼ぶように行かせる。彼は皮肉交じりにトスカを自らの権力で屈服させるのだと歌う。

スポレッタが拘留したカヴァラドッシとともに登場する。アンジェロッティはからくも逃れたのだった。スカルピアは画家を尋問するが彼は白状しない。そこでカヴァラドッシを別室で拷問にかける。
そこに入れ替わりにトスカが登場し、スカルピアに恋人の苦痛のうめきを聞かされると、ついに堪えきれずにアンジェロッティの隠れ場所をしゃべってしまう。
画家が部屋から引き戻され、彼女が秘密を漏らしたことを激しく詰る。
そこに伝令が登場し、ナポレオンがマレンゴでオーストリア軍を破っていたことを知らせる。
動揺するスカルピア達の面前でカヴァラドッシは勝ち誇って激しく勝利を歌い上げるので牢屋に連行される。

 後を追おうとするトスカを、スカルピアが呼びとめる。彼女は賄賂で助命を得ようとするがスカルピアは恋人を自由にする代償として彼女の身体を求める。
トスカは絶望し、何故このような過酷な運命を与えたのかと神に助けを求めて祈る(歌に生き、愛に生き)注釈。
スポレッタが戻ってきてアンジェロッティが自殺したことを告げ、カヴァラドッシの処遇をたずねる。

トスカが観念したと見たスカルピアは、スポレッタに対しカヴァラドッシの見せかけの処刑を行うよう命令する。
パルミエリ伯爵の時と同じだ、と説明するのを意味ありげに聞き、部下は退出する。
トスカはイタリアを出国できるよう、スカルピアに通行証を求める。スカルピアが書類を書いている間、食卓のナイフに気づいたトスカはそれを隠し持つ。
書き終えたスカルピアがトスカ、とうとう我が物と迫るところを、トスカはこれがトスカのキッスよといってナイフで胸を刺す。息絶えた彼の手から通行証を奪うと、トスカは信心深く遺体の左右に燭台をおき、十字を切ると遠くの太鼓の音をききつつ去る。

注釈:一般には「歌に生き、恋に生き」で知られている。
しかし、トスカは「私は歌に生き、神へのamoreに生きてきたのです。」と歌う。
ここでのamoreは「愛」と訳すのが妥当である。
したがって、「歌に生き、愛に生き」の訳が適切である。

第3幕
サンタンジェロ城の屋上にある牢屋と処刑場。 冒頭、ホルンのファンファーレに続いて、朝を告げる鐘の音と羊飼いの牧歌が聞こえる。
カヴァラドッシは夜明けに行われる処刑を牢屋で待っている。彼は司祭との面会を断り、看守に指輪を与えてトスカに伝言を渡すよう頼む。
別れの手紙を書き始めるが、自らの死と恋人との別れを想うと絶望して泣き崩れる(星はきらめき)。

トスカが現れ、驚くカヴァラドッシに通行証を見せ、これまでのいきさつを語る。
空砲で見せかけの処刑が行われること、恋人の助命を引き換えに身体を要求したスカルピアを、信心深く虫も殺せぬ彼女が刺し殺したことを聞き、カヴァラドッシは彼女の手をとって「おおやさしい手よ」とトスカの愛情と勇気をたたえる(優しく清らかな手)。

時間が迫ったことを告げる彼女にカヴァラドッシは君ゆえに死にたくなかったと語りトスカと互いの愛情を歌う(二重唱新しい希望に魂は勝ち誇って)。

看守がカヴァラドッシに時が来たことを告げる。 トスカに見送られて刑場に赴くカヴァラドッシに彼女はうまく倒れてねと言葉をかけ彼も劇場のトスカのようにと応じる余裕を見せる。
並んだ兵士たちが一斉に発砲し、カヴァラドッシは倒れる。
トスカは彼の演技がうまいと一人ほめる。隊長が規則通り剣でとどめを刺すのをスポレッタが制し、一同去る。
兵士たちが去ったのをみてトスカはマリオに近づき、逃げようと声を掛けるが彼は動かない。

処刑は本物であった。スカルピアは最初からカヴァラドッシの命を救うつもりなどなかったのだ。
パルミエリ伯爵もそのようにして欺かれたのであろう。 トスカは死んで横たわるカヴァラドッシの傍らでスカルピアの計略を悟り、マリオの名を呼んで泣き叫ぶ。
そこにスカルピアが殺されていることを知ったスポレッタが兵士と共に駆け寄り、彼女を殺人罪で逮捕しようとするが、彼女は逃れ、サンタンジェロ城の屋上から身を投げる。
《収録情報》
● プッチーニ:歌劇『トスカ』全曲

 レオンティーン・プライス(トスカ)
ジュゼッペ・ディ・ステーファノ(マリオ・カヴァラドッシ)
ジュゼッペ・タッデイ(スカルピア男爵)
カルロ・カーヴァ(アンジェロッティ)
フェルナンド・コレナ(堂守)
ピエロ・デ・パルマ(スポレッタ)、他
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)

 録音時期:1962年9月
録音場所:ウィーン、ゾフィエンザール
録音方式:ステレオ(アナログ/セッション)

 

ドニゼッティ:歌劇『愛の妙薬』全曲
ボニング&イギリス室内管、パヴァロッティ、
サザーランド、他(1970 ステレオ)

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《主な登場人物》

  1. アディーナ - 美人で頭も良いが、ちょっと高慢な富農の娘(ソプラノ)
  2. ネモリーノ - 単純で間抜けな貧農、アディーナに想いを寄せている(テノール)
  1. ベルコーレ - 若くて野心満々の軍曹(バリトン)
  2. ドゥルカマーラ博士 - 口の達者なインチキ薬売り(バス)
  3. ジャンネッタ - 村娘。事情通のうわさ好き(ソプラノ)

村の若者たち - 合唱

 パヴァロッティの当たり役として有名なネモリーノ役のアリア「人知れぬ涙」は、リサイタルでもパヴァロッティが愛唱していた特別なレパートリー。
ベルカント・オペラの代表的作品でもあるこのオペラは、シンプルなストーリーとそれぞれの場面を彩る魅力的な音楽で親しまれており、ドタバタ的な側面もあることから、カットを施したコミック・オペラとして上演されることも多い。

ここではベルカント・オペラの研究家でもあるリチャード・ボニングにより、ノーカット&華麗な装飾も加えて、ベルカント・スタイルで叙情的な面を大切にした演奏を聴かせている。
パヴァロッティ演じるネモリーノが惚れるアディーナは、サザーランドが美声と高度なテクニックで聴かせ、インチキ薬売りのドゥルカマーラは、アメリカのバス、スピロ・マラス(スパイロ・マラス)が楽しく演じ、恋敵のベルコーレ軍曹は、アメリカのバリトン、ドミニク・コッサが歌っている。
こうしたボニング指揮による演奏を、アナログ全盛期の優秀な録音で仕上げたデッカのスタッフは、プロデューサーがクリストファー・レイバーン、エンジニアがケネス・ウィルキンスン、ジェイムズ・ロックという面々である。
LP時代から音の良さで知られたこの『愛の妙薬』が、今回のリマスターでどのような音質になるか楽しみな高音質化企画の登場です。(HMVから引用)

 

 

《あらすじ》
Enrico Caruso, 1911
時と場所:スペイン、バスク地方の小さな村、18世紀の終わり
第1幕
前奏曲の後幕が上がると、村人の集う広場。ネモリーノは美しいアディーナへの想いを独白するが、彼女は魯鈍で弱気なネモリーノにはすげない。
アディーナは『トリスタンとイゾルデ』の本を他の村娘たちに読んで聞かせて「飲めばたちどころに恋が成就する愛の妙薬、そんなのあり得ないわね!」と大笑いしている。
村外れに宿営しているベルコーレ軍曹が行軍を率いて登場、その洗練された物腰と凛々しい軍服姿にアディーナは一目惚れ、ネモリーノは焦る。

そこへ「森羅万象に通暁した、人類の救済者」と名乗る薬売りドゥルカマーラ博士なる人物が登場、巧みな宣伝口上で村人に薬を売り付ける。
人々が去った後、残ったネモリーノはドゥルカマーラに「イゾルデの使ったという妙薬」を求め、ドゥルカマーラは、とんだ馬鹿が来たとばかりにボルドー産ワインを「秘薬」として高値で売りつけてしまう。「効目が出るまで1日待たれよ。ただし当局がうるさいので、薬のことは秘密ですぞ」と言い含めて。

早速試飲したネモリーノは「秘薬」の勢いで気が大きくなり、陽気に唄いだす。秘薬の力でアディーナもすでに手にいれたも同然と、彼女の前でもそっけない態度をとる。手玉にとっていたつもりの男が態度を急変させたことに困惑し、激怒したアディーナは、やって来たベルコーレ軍曹の求婚に応じてしまう。
妙薬の薬効で、明日になれば彼女は自分のもの、と信じて鷹揚に構えていたネモリーノだったが、ベルコーレの隊に進軍命令が出て、日を待たず、急遽今晩アディーナと婚礼を挙げる、と知って愕然とする。
第2幕
幕が変わってアディーナとベルコーレ軍曹の婚礼の場。
人々は陽気に飲み、歌うが、いざ結婚の誓約となるとアディーナはなぜか躊躇してしまう。
事態挽回を図るネモリーノはドゥルカマーラに更に妙薬を所望するが、金がない。仕方なく彼は、恋敵ベルコーレ軍曹の部隊に一兵卒として入隊することとし、給料20スクードを前借りして秘薬を1本購入、飲み干して眠り込んでしまう。
ベルコーレ軍曹は恋敵が部下とは面白い、とせせら笑う。

一方で、アディーナを除く村娘たちはネモリーノの噂で持切りになっている。彼の伯父が死んで、残った巨額の遺産はネモリーノがすべて相続する、というのだ。
娘たちは、ネモリーノと結ばれて玉の輿を夢見る。酔いから醒めた彼は村一番の人気者になっていてびっくりし、これも妙薬の効き目、と大喜びする。
一方のアディーナは、娘たちに囲まれるネモリーノを見て、心中穏やかでない。しかし、ドゥルカマーラから、ネモリーノが秘薬を手に入れる為に命の補償も顧みず軍隊に入ったことを聞かされ、アディーナは思わず涙を流す。そして自分が結婚の誓約に二の足を踏んだ理由は、自分も本当は純朴なネモリーノを恋しているからだ、と悟り、入隊契約書を買い戻して彼に愛を告白する。
こうして結ばれた2人を村人は祝福し、ドゥルカマーラ大先生の愛の妙薬の効能を一同で賞賛して、幕。
《収録情報》
● ドニゼッティ:歌劇『愛の妙薬』全曲

 ルチアーノ・パヴァロッティ(ネモリーノ/テノール)
ジョーン・サザーランド(アディーナ/ソプラノ)
ドミニク・コッサ(ベルコーレ/バリトン)
スピロ・マラス(ドゥルカマーラ/バス)
マリア・カズーラ(ジャンネッタ/ソプラノ)、他
アンブロジアン・オペラ・コーラス
イギリス室内管弦楽団
リチャード・ボニング(指揮)

 録音時期:1970年1月、6月
録音場所:ロンドン、キングスウェイ・ホール
録音方式:ステレオ(アナログ/セッション)

愛の妙薬』は、ガエターノ・ドニゼッティが作曲、1832年に初演された全2幕からなる喜劇的オペラである。
テノールとソプラノの主役カップルにバリトン2人で大部分を占め、他に脇役ソプラノ1人、合唱というシンプルな人物構成で、4人までは充分に見せ場、聴かせ場が与えられているため、スター歌手の顔見世公演にも適している。
《作曲の経緯》
ミラノのカノビアーナ劇場では5月の舞台にオペラの新作を登場させるべく、ある作曲家に新作を依頼していたが、作業を突然放棄してしまった。

期日まで1か月の短期間であったため、支配人アレサンドロ・ラナーリは速筆で知られていたドニゼッティに泣きつかんばかりに新作オペラを依頼した。
ドニゼッティの条件は、すでにオペラ『アンナ・ボレーナ』で作業を共にしていた人気台本作家ロマーニ(当然、彼もまた速筆であった)を使って1週間程度で台本を得ることであった。

しかしロマーニといえどもこの短期間に白紙から台本を起こすことは不可能だったものと見え、彼は前年パリでスクリーブがオベールのために書いたオペラ台本"Le philtre" を翻案し、田舎の村で起きた他愛もない恋愛喜劇2幕物を書き上げた。

ドニゼッティはその台本にわずか2週間で作曲したという。前年の1831年、同じミラノでベッリーニが、やはり田舎村での恋愛騒動を描いたオペラ『夢遊病の女』(La sonnambula)を成功させていたことも、ドニゼッティとロマーニの念頭にあったとも考えられる。

劇場の願い通り、オペラは5月の舞台に間に合ったばかりか、初演から30回以上の再演を数える大ヒットとなって、ドニゼッティは一段と盛名を馳せることとなった。

 

 

歌劇『ラ・ボエーム』全曲(プッチーニ)No.1-3 

『ラ・ボエーム』とは、「ボヘミアン」のこと。1830年当時のパリに多くいた芸術家の卵たちはみな貧しく、けれども、みな希望に胸あふれ、生き生きと過ごしていた。そんなボヘミアンの特別でない日常的な風景を、このオペラは描き出している。

作曲したプッチーニも20代で故郷ルッカからミラノに出て、苦学に励んでいたことから、このオペラに特別な愛着があった。

 

カラヤン&ベルリン・フィル、パヴァロッティ、フレーニ(1972 ステレオ)(2CD+ブルーレイ・オーディオ)

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プッチーニ:『ボエーム』(2CD+ブルーレイ・オーディオ)
ルチアーノ・パヴァロッティ、ミレッラ・フレーニ
《ヘルベルト・フォン・カラヤン&ベルリン・フィル》

長年デッカのバランス・エンジニアを務めるフィリップ・サイニーが、アビー・ロード・スタジオで新たにリマスター。2枚のCDに加えて、ブルーレイ・オーディオ・ディスクには24bit音源を収録。

《あらすじ》

  1. 場所:パリ
  2. 時代: 1830年代

第1幕
パリのカルチエ・ラタンにあるボヘミアン仲間が暮らす屋根裏部屋。クリスマス・イヴ。

画家・マルチェッロと詩人・ロドルフォが火の気の無い部屋で仕事をしている。寒さに耐えかねてロドルフォが売れ残りの原稿を暖炉に入れて燃やす。
「世界の損失だ」などと軽口をたたいていると哲学者コッリーネが帰ってきて、何も金になることがなかったとぼやく。

そこへ音楽家ショナールが食料・薪・煙草などを運ぶ従者たちとともに意気揚々と入ってくる。ショナールはこれらをどうやって稼いだかを得意げに語るが、誰も耳を貸さず貪るように食料に飛び付く。しかし、ショナールはワイン以外は取り置いて、「今夜はクリスマス・イヴなのだから、皆でカフェ・モミュスに繰り出そう」と提案し、一同大賛成する。
そこへ家主のブノアが未払い家賃の催促にやってくる。ボヘミアンたちはブノアにショナールの金を見せて安心させ、ワインをすすめておだてる。家主が酔った勢いで、妻があるにもかかわらず浮気をしていたことを語ると、一同憤慨したふりをして家主を部屋から追い出してしまう。

彼らは家賃になるはずの金をカフェ・モミュスでの飲食費として分けあう。皆出かけるが、ロドルフォは書きかけの原稿があるといって一人残って書きつづける。

そこに誰かがドアをノックする。お針子のミミがカンテラの火を借りに来たのだが、めまいがして床に倒れ込む。
ロドルフォに介抱されて落ち着いたミミは火を借りて礼を言い、立ち去る。しかし、彼女は鍵を落としたといって戻ってくるが、戸口で風が火を吹き消してしまう。再度火を付けようと、近寄ったロドルフォの持つ火もまた風で消えてしまう。しかたなく二人は暗闇で鍵を探す。
ロドルフォが先に見つけるが、彼はそれを隠しミミに近寄る。そして彼女の手を取り、はっとするミミに自分のことを詩人らしく語って聞かせる(「冷たい手を」)。
続いてミミも自己紹介をする(「私の名はミミ」)。
一向に降りてこないロドルフォを待ちかねた仲間が「まだか」と声をかける。ロドルフォは「今2人でいる、直ぐに追いつくから席を2人分取っておいてくれ」と言う。仲間たちは気を利かせて先に行くことにする。
まだ愛を確認したいロドルフォだが、ミミが仲間と一緒に行きたいと言うので後を追ってパリの街に出かけることにする。ふたりの愛情のこもった二重唱で幕がおりる。

 

 

第2幕
カフェ・モミュス
クリスマスを祝う群集で賑わう通りで、物売りが口々に声を張り上げている。
ボヘミアン仲間はカフェに集まり食事を始める。
ロドルフォはミミに帽子を贈る。そこにマルチェッロの元の恋人ムゼッタが金持ちのパトロンのアルチンドロとともにやってくる。

彼女は頻りにマルチェッロの気を引こうとする(「私が街をあるけば」)。マルチェッロはそれを意地でも無視しようとするのでムゼッタはさらに誘惑を続け、アルチンドロはうろたえる。
ついにムゼッタは靴がきつくて痛いと騒ぎ出し、アルチンドロを靴屋へ修理に行かせる。さきほどからムゼッタへの想いを絶ちきれずにいたマルチェッロと邪魔者がいなくなったムゼッタは互いに抱きあう。
彼らは勘定を済ませようとするが、手持ちの資金が底をついている。ムゼッタは自分と彼らの支払いをアルチンドロに払わせることにする。
そこへ帰営する軍隊の行進が通りかかり、その見物の喧騒に紛れて逃げることにする。マルチェッロとコルリーネは片足裸足で歩けないムゼッタを抱え行進の後を追い、周りで見ていた人々はその意気揚々とするのを見て喝采を送る。
その他の人々も行進の後を追う。全員が立ち去った後アルチンドロが靴を持って戻りムゼッタを探す。ギャルソンが彼に勘定書きを手渡すとアルチンドロはその額に驚き、そしてその場に誰もいないのを知って、その場で椅子に座り込み第2幕を閉じる。

 

第3幕
ダンフェール門の市外との関税所前。翌年2月。
明け方。衣服行商人が市内にやってくる。
他にも様々な商人の行き来がある。居酒屋でムゼッタが歌うのが聞こえる。
ミミが登場し激しく咳き込み、居酒屋にマルチェッロを訪ねる。
彼はここで看板を描いているという。ミミはマルチェッロに、ロドルフォとの生活がうまくいかない悩みを打ち明ける。彼は嫉妬深く、自分に冷たいというのだ。ついにロドルフォは昨夜ミミを置いて家を出たという(「助けてマルチェッロ」)。

マルチェッロは、ロドルフォは宿屋で眠っていると答える。そこへロドルフォが目を覚まし、マルチェッロを探しに出てくるのでミミは隠れる。
ロドルフォはミミのことを問うマルチェッロに、彼女の病気が重く、自分と暮らしていては助からないので別れなくてはならないと打ち開ける。
マルチェッロは陰で聞いているミミのことを案じ、彼を黙らせようとするが彼女はすでにロドルフォの話をすっかり聞いてしまう。

彼女が泣きながらせき込むのでロドルフォも彼女に気付き、心配しておおげさに言っただけだから心配無いと彼女を慰める。

居酒屋のムゼッタの嬌声を聞いてマルチェッロが店に駆け込む。
彼は彼でムゼッタの奔放な性格に手こずっていたのだ。

ふたりきりになると、彼の配慮を察したミミはロドルフォに別れを告げる。以前住んでいた屋根裏部屋に戻ること、身の周りの細々したものを誰かに取りに行ってもらうことなどを淡々と語るが、「以前買ってもらったあの帽子だけは、良かったら私の思い出にとって置いて欲しい」と別れを言う(「あなたの愛の声に呼ばれて出た家に」)と、ロドルフォも彼女をいたわりつつ別れの言葉をかわす(「さらば甘い目覚めよ」)。
ふたりの歌に並行して、居酒屋から出てきたムゼッタとマルチェッロが激しく言い争って喧嘩別れして行く。
ロドルフォとミミが第1幕最後の愛の言葉を交わす二重唱の一節を繰り返して幕が下りる。

第4幕
再び屋根裏部屋。数ヶ月後。
ロドルフォとマルチェッロが仕事をしているが、二人とも別れた恋人の事が思い出されて仕事にならない(「ああミミ、君はもう戻ってこない」)。
ショナールとコッリーネが食料を持って帰り、四人はいかにも豪勢な食事であるかのように芝居をしながら食べる。演技に興じて決闘のまねごとをしているところに、ムゼッタが血相を変えて賭け込んでくる。

ミミと戸口までいっしょに来たが彼女は今そこで倒れた、というのでロドルフォは急いで助けに行く。ムゼッタは金持ちの所で世話になっていたミミが、死ぬ前に一目ロドルフォに会いたいというので連れて来たことを三人の仲間に語る。

ミミはロドルフォ、仲間たちとの再会を喜ぶ。彼女をベッドに寝かせると、ムゼッタはミミの手を温めるためのマフを取りに、マルチェッロはムゼッタのアクセサリを売って薬を買うために揃って出て行く。
コッリーネは瀕死のミミのために自分の古着を質に入れようと、ショナールを誘って部屋を去る(「古い外套よ」)。

2人きりになると、ミミはロドルフォに話しかける(「みんな行ってしまったのね」)。ロドルフォが例の帽子を見せるとミミは喜び、二人の出会いと幸せな暮らしのことを語りあう(「ああ、僕のミミ」)。しかしミミは再び気を失い、ロドルフォが声を出すと外で様子をうかがっていたショナールたちが駆込んで来る。

ミミは再び目覚め、ムゼッタが持ってきたマフで手が暖まると喜ぶ。そのまま眠りにつくミミの側でムゼッタは聖母マリアに祈る(ムゼッタの祈り)。
ショナールがふとミミを見ると彼女はすでに息絶えていた。そっと皆に知らせると、ロドルフォは周りのただならぬ様子に事態を察し、ミミの亡骸にすがりついて泣き臥す。
さきほどのミミが歌ったモティーフをオーケストラが強奏で繰り返して幕となる。

《収録情報》
● プッチーニ:歌劇『ボエーム』全曲

ミレッラ・フレーニ(ミミ
ルチアーノ・パヴァロッティ(ロドルフォ)
ロランド・パネライ(マルチェッロ)
ニコライ・ギャウロフ(コルリーネ)
ジャンニ・マッフィオ(ショナール)
エリザベス・ハーウッド(ムゼッタ)
ミシェル・セネシャル(ブノア、アルチンドロ)
ゲールノート・ピエチュ(パルピニョール)
ハンス・ディートリヒ・ポール(税関の役人)
ハンス・ディーター・アッペルト(巡査部長)
シェーネベルク少年合唱団
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)

録音時期:1972年10月
録音場所:ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会
録音方式:ステレオ(セッション)
プロデューサー:レイ・ミンシャル、ジェイムズ・マリンソン
エンジニア:ゴードン・パリー、コリン・ムアフット

 

《教会での入念なセッション録音》
録音はベルリンのイエス・キリスト教会でおこなわれた。
1972年といえばすでにアナログ・ステレオ録音の技術が十分に高いレベルに達していた頃でもあり、ここでもパヴァロッティ、フレーニ、パネライ、ギャウロフ、ハーウッドという歌手たちの声が個別の質感も大切に収録され、シェーネベルク少年合唱団とベルリン・ドイツ・オペラ合唱団による群衆たちの歌も適度な距離感で生き生きと迫ってくる。

ピット内のオケでは考えられないほどの精妙なニュアンスと色彩、そして力強く存在感のある音を響かせるベルリン・フィルの演奏は、プッチーニのオーケストレーションの巧さを十分に現している。

 

『椿姫』全曲 カルロス・クライバー&バイエルン国立管弦楽団、コトルバス、ドミンゴ、他(1976-77 ステレオ)(2CD+ブルーレイ・オーディオ)

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  1. ヴェルディ:歌劇『椿姫』全曲

    イレアナ・コトルバス(ヴィオレッタ)
    プラシド・ドミンゴ(アルフレード)
    シェリル・ミルンズ(ジェルモン)
    ステファニア・マラグー(フローラ)、他
    バイエルン国立歌劇場合唱団
    バイエルン国立管弦楽団
    カルロス・クライバー(指揮)

    録音時期:1976-1977年
    録音場所:ミュンヘン、ビュルガーブロイケラー
    録音方式:ステレオ(アナログ/セッション)

あらすじ
前奏曲
第3幕冒頭の場面の哀愁をおびた旋律が奏でられたのち、第2幕でヴィオレッタがアルフレードに別れを告げる場面の旋律が引き継ぐ。華やかに装飾しつつも、どこか物悲しい気分を作り、静かに終わる。
第1幕
ヴィオレッタの住む屋敷。今夜も賑やかなパーティーが開かれており、女主人は来客をもてなしている。そこへアルフレードがガストーネ子爵の紹介でやってきてヴィオレッタに紹介される。歌を1曲歌うよう勧められた彼はいったん辞退するが皆の再度の勧めでグラスを片手に準備をする。一同の沈黙と緊張のなかアルフレードは情熱を込めて歌い、ヴィオレッタが加わってデュエットになる。さらに皆が加わって華やかに歌い上げる(「乾杯の歌」)。
皆が別室に行こうとしたときにヴィオレッタがめまいをおこして椅子に座り込む。何でもないからと一人部屋に残った彼女の所にアルフレードが来る。アルフレードはヴィオレッタに、こんな生活をしていてはいけないといい、1年前からあなたを好きだったと告白する。ヴィオレッタは最初は軽くあしらうが、彼の真剣さに少し心を動かされる。ヴィオレッタは椿の花を渡して再会を約し、「この花がしおれるころに」という。有頂天になるアルフレードに「もう一度愛しているといってくれますか」とヴィオレッタが尋ねると、「はい、何度でも!」と彼は応ずる。
アルフレードに続き来客が去って一人になったヴィオレッタは物想いにふける。「不思議だわ」(作品を通じ、彼女はこの言葉を各幕で1回、計3回繰り返す)と純情な青年の求愛に心ときめかせている自分の心境をいぶかる。そして、彼こそ今まで待ち望んできた真実の恋の相手ではないかと考える(「ああ、そは彼の人か」)。しかし、現実に引き戻された彼女は「そんな馬鹿なことをいってはいけない。自分は今の生活から抜け出せる訳が無い。享楽的な人生を楽しむのよ」と自分に言い聞かせる。(「花から花へ」)彼女の中でアルフレードとの恋愛を肯定するもう一人の自分との葛藤に、千々に乱れる心を表す、コロラトゥーラ唱法を駆使した華やかな曲で幕切れとなる。
第2幕
第1場
パリ郊外のヴィオレッタの屋敷
二人の出会いから数か月が経った。ヴィオレッタは貴族のパトロンとの華やかな生活を捨て、この家でアルフレードと静かに暮らすことを選んだのである。彼女との生活の幸福を語るアルフレード(「燃える心を」)は、丁度帰宅した召使いから、この家での生活費のためにヴィオレッタが彼女の財産を売却していたことを聞き、気付かなかった自分を恥じるとともに売ったものを取り戻そうとパリに向かう。
そこへヴィオレッタが登場し、彼のパリ行きを聞き(理由は知らない)、いぶかる(2度目の「不思議ね」)。そこにアルフレードの父親ジョルジョ・ジェルモンが突如来訪する。驚きながらも礼儀正しく迎える彼女に、あたりを見回し「息子をたぶらかして、ずいぶんと贅沢な暮らしをしていますな」といきなりなじったため、ヴィオレッタは「私の家で女の私に失礼なことを言わないでください」と毅然と応じ、たじたじとなるジェルモンに秘密を打ち開ける。彼女が自分の財産を息子との生活のために手放しつつあることを知ったジェルモンは非礼を詫びる。アルフレードをどんなにか愛しているかと理由を説明する彼女に対し、ジェルモンは本題を切り出す。息子と別れてくれというのである。駄目ですと即座に断るヴィオレッタに、彼はアルフレードの妹の縁談に差し支えるから、助けて欲しいと迫る。ついに要求を受け入れ、彼女は身を引くことを決心する。しかし単に家を去ってもアルフレードは追いかけてくるだろう。方法は任せて下さいと請合うヴィオレッタに礼を言って、父ジェルモンはいったん去る。
一人になったヴィオレッタは一計を案じ、アルフレードに手紙を書く。彼女はアルフレードと別れて元のパトロンとの生活に戻る、という偽りのメッセージを送ろうとしたのである。そこへアルフレードが帰宅する。彼は父が訪ねていくという手紙を見て、すでに父が来たとは知らずに、ヴィオレッタに大丈夫だなどという。ヴィオレッタは、アルフレードの父が来るなら席を外して庭にいると言いその場を去る。別れ際に彼女は「アルフレード、いつまでも愛しているわ、あなたも私と同じだけ愛して。さようなら」と第1幕の前奏曲の後半の旋律で歌う。アルフレードは彼女の様子を不審に思うが、父親が来ることに動揺しているのだと思い込む。アンニーナが登場し、ヴィオレッタが急遽出かけたこと、手紙を預かったことを告げる。不安にかられつつ手紙を読み、アルフレードは自分が裏切られたと思い込んで激怒する。そこに父ジェルモンが再登場して、息子を慰め、故郷のプロヴァンスに帰ろうとなだめる(「プロヴァンスの海と陸」)。しかし息子は自分の受けた恥辱を濯ぐのだといい、パリに向かう。
第2場
パリ市内のフローラの屋敷
相変わらず貴族と愛人たちが戯れあう日々である。丁度仮面舞踏会が開かれている。フローラとオビニー侯爵、グランヴィル医師らは、アルフレードとヴィオレッタが別れたという噂話をしている。ジプシーの占い師やマタドールなどの仮装の後、アルフレードが登場、彼らはカードの賭けを始める。そこにドゥフォール男爵にエスコートされたヴィオレッタが登場、ドゥフォールはアルフレードを避けるようヴィオレッタに指示する。アルフレードはつきまくり、ヴィオレッタへの皮肉を言う。それに激高したドゥフォールも賭けに参加するが、ドゥフォールはアルフレードに大負けする。そこに夕食の準備ができ、一同退場する。アルフレードとドゥフォールも後ほどの再戦を約束して退場する。アルフレードの身を案じたヴィオレッタは彼を呼び出し、自分のことなど忘れ、逃げて欲しいと訴える。それに対してアルフレードは復縁を迫るが、ジェルモンとの約束で真意を言えないヴィオレッタはドゥフォールを愛していると言ってしまう。それに激高したアルフレードは皆を呼び出し、これで借りは返したと叫んで先程賭けで得た札束をヴィオレッタに投げ付ける。自分の真意が伝わらず、皆の面前で侮辱された彼女は気を失う。一同がアルフレードを非難しているところに父ジェルモンが現れ、息子の行動を諌める。自分のやったことを恥じるアルフレードと、真相を言えない父ジェルモンの独白、アルフレードを思いやるヴィオレッタの独白、ヴィオレッタを思いやる皆の心境をうたい、ドゥフォールはアルフレードに決闘を申し込んで第2幕を終わる。
第3幕の前奏曲
第1幕前奏曲と同じ音楽が、やはり弦楽合奏で始まる。いっそう悲痛な調子で演奏され、アルフレードに愛を告げる音楽はもはや登場しない。切れ切れになったフレーズでひっそりと、弱々しく終わる。
第3幕
パリのヴィオレッタの屋敷
数か月が経った。アルフレードは男爵と決闘して勝ち、男爵は傷ついたが快方に向かっている。国外に出たアルフレードに父親は手紙を書いてヴィオレッタとの約束を告白し、交際を許すことを伝えてヴィオレッタの元にもどるよう促しており、そのことをヴィオレッタにも手紙を書いていた。しかし、皮肉なことにヴィオレッタの生命は尽きかけていた。持病の肺結核が進行していたのである。
幕が上がると、ヴィオレッタがベッドに寝ている。彼女はアルフレードの帰りを今か今かと待ちわびている。何度となく読んだジョルジョからの手紙をもう一度読む(ここは歌わずにほとんど朗読する)。読み終わった彼女は一言「もう遅いわ!」と叫び、過ぎた日を思って歌う(「過ぎし日よ、さようなら」)。「ああ、もう全ておしまい」と絶望的に歌い終わると、外でカーニバルの行進の歌声が聴こえる。
医師がやってきてヴィオレッタを診察し励ますが、アンニーナにはもう長くないことを告げる。そこにとうとうアルフレードが戻ってくる。再会を喜ぶ二人は、パリを出て田舎で二人楽しく暮らそうと語り会う(「パリを離れて」)。しかし、死期の迫ったヴィオレッタは倒れ臥す。あなたに会えた今、死にたくないとヴィオレッタは神に訴える。そこに医師や父ジェルモンが現れるが、どうすることもできない。ヴィオレッタはアルフレードに自分の肖像を託し、いつか良い女性が現れてあなたに恋したらこれを渡して欲しいと頼む。
彼女は「不思議だわ、新しい力がわいてくるよう」といいながらこと切れ、一同が泣き伏すなかで幕となる。

 

 

 

 

 

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