【Z・CD特別情報27】
スカルラッティ ソナタ集
〜ヒューイットが奏でるファツィオーリの調べ〜
スカルラッティ ソナタ集
〜ヒューイットが奏でるファツィオーリの調べ〜
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《収録情報》
D.スカルラッティ:
● ソナタ ニ短調 K.9
● ソナタ ハ長調 K.159
● ソナタ ロ短調 K.87
● ソナタ ニ長調 K.29
● ソナタ イ長調 K.113
● ソナタ ニ長調 K.430
● ソナタ ト短調 K.8
● ソナタ ト長調 K.13
● ソナタ ロ短調 K.27
● ソナタ ニ長調 K.140
● ソナタ ニ短調 K.141
● ソナタ ヘ短調 K.69
● ソナタ ト長調 K.427
● ソナタ イ短調 K.109
● ソナタ ニ長調 K.96
● ソナタ ホ長調 K.380アンジェラ・ヒューイット(ピアノ/ファツィオーリ)
《ファツィオーリというピアノ》
ファツィオーリというピアノをご存知であろうか。スタインウエイやベーゼンドルファーは知っているが、ファツィオーリは聴いた事が無い、というのが大方のご意見であろう。そこでファツィオーリの紹介。
創始者兼現社長、パオロ・ファツィオリは、家具職人の家に生まれ、ロッシーニ音楽院でピアノを、ローマ音楽院で作曲を専攻した後、ファツィオーリ社を1981年に創業した。工場はイタリア北部のサチーレにある。この際、各分野の専門家たちに、ゼロからピアノを設計する計画への参加を要請。ピアノ調律師兼製作者のチェーザレ・アウグスト・タローネ(ミケランジェリのピアノ調律も務めた)の弟子らを招聘し、1980年に最初のモデルを完成させた。
製品ラインナップは高級(約900万円)グランド・ピアノに限定さ れている。生産量は、2009年時点で年間120台程度とされる。ショパン・コンクールの公式ピアノに選ばれているのでご存知の方もいるであろう。
ファツィオーリのピアノを用いた録音で、スカルラッティのソナタを演奏している。
スカルラッティのソナタはチェンバロの作品であるが、ピアノで演奏される機会も多い。
なかでもソナタ ホ長調 K.380は名曲である。
《アンジェラ・ヒューイットというピアニスト》
アンジェラ・ヒューイット(ピアノ)第10回(1980年)ショパン・コンクールのファイナルに残ったピアニスト。カナダの音楽一家に生まれ、3歳でピアノを始める。4歳で聴衆を前に演奏し、5歳で最初の奨学金を得る。
その後ジャン=ポール・セヴィラに師事。1985年のトロント国際バッハ・ピアノ・コンクールに優勝し、一躍世界の注目を集める。ヨーロッパ、アメリカ、アジア等世界各地でのリサイタルのほか、著名オーケストラと定期的に共演しており、ハイペリオン・レーベルからの卓越した録音により「我々の時代の傑出したバッハ弾き」(ガーディアン紙)との賞賛を得ている。
《スカルラッティの作品分類番号》
Kはカークパトリック番号のこと。ほかにL(ロンゴ)番号などがある。いずれも作品の分類番号のことであり、チェンバロ・ソナタの分類で用いられる。
《ファツィオーリで演奏》
さてスカルラッティのソナタをファツィオーリで演奏するとどうなるか?蒸留水を飲んでいる気分で味も素っ気もない。純粋な水だからと期待したが評価は未だ定まらない。普段よく演奏されるスタインウエイは蒸留水のような音ではない。
これは杵淵調律師の弟子である調律師の岩崎君から聴いた話である。
「演奏会場で音を遠くまで聴こえるようにするためには、同じ平均率で調律しても、平均率に多少味付けをして外れた平均率(意外な言葉であるが)に調律するとのことである。」これを具体的にどのようにするかが調律師の腕の見せ所だそうである。とくにスタインウエイは味付けをしないと、スタインウエイの特徴が出ないそうである。「ジン・ジン」とでも表現すれば良いのであろうか、よく聞くとそのような音の成分が聞き取れる。
ではファツィオーリというピアノはどうであろうか。私はファツィオーリを弾いた事が無いので、あくまでも推測であるが、スタインウエイに比べてファツィオーリは蒸留水に近いピアノのようにおもえる。
だから、演奏会場では味のついていない音のように聴こえるのではないだろうかと想像する。日本ではファツィオーリはまだ普及していない。東京近辺では聴くチャンスはほとんどない。
しかし、ファツィオーリはこれまでの水とは味(響き)は違う。何かくせになりそうな味(響き)がある。
これからスタインウエイとファツィオーリはいい勝負をするようになる可能性があるに違いない。
もっとも、たくさんのピアニストがファツィオーリで演奏するようになれば、という但し書きはつくが。また、日本のホールでは松尾楽器の専売セールスでほとんどがスタインウエイになっているので、更新期間(おそらくホールの寿命と同じくらいではないか)が過ぎない限りファツィオーリの採用はないであろう。
余談だが、海外のピアニストが日本の地方のホールで演奏するとき、必ずスタインウエイが設備されていることに驚く。《ショパン・コンクールとピアノ》
ショパン・コンクールで、スタインウエイは演奏家専属の調律師をワルシャワに常駐させていて、演奏家の好みに合わせた調律の情報を収集しているという。
さすがにスタインウエイである。最近ヤマハやカワイも同様のシステムをとり入れようとしているらしい。ピアニストの中村紘子さん(2016年7月26日没)は、前出の岩崎さんを専属の調律師として指名していた。ピアニストは弦楽奏者のようにピアノという楽器をその都度運搬することはできない。
残されたポイントは調律の良し悪しである。調律だけでなく、鍵盤の浅い・深い、ハンマーと弦のタッチなどなど調律師が関わる領域はかなり広く、それだけ聴衆にとってはブラック・ボックスでピアノを聴くようなものである。
これからはピアニストの名前と調律師の名前が併記される時代が来るかもしれない。
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