【Z・CD特別情報15】


易の音楽
~不可思議な音楽に何を発見するのか~

 



 1960年代、日本は現代音楽の熱気にあふれていた。
その一翼を担ったのはアメリカ文化センターであった。
アメリカ文化センターの歴史は、第二次世界大戦の終結間もない1945年9月22 日に設置されたGHQ/SCAP 民間情報教育局(Civil Information and Education Section。以下CIE)にはじまり,全国23 箇所にCIE 図書館を設置し,アメリカから取り寄せた英文図書や逐次刊行物を一般市民に公開した。

 1952年4月の日米講和条約発効後,その機能は米国国務省に移管され,13都市の「アメリカ文化センター(American Cultural Center。以下,ACC)」として活動することになる。

 私はまだ芸大の学生であった頃、代々木の第二体育館でアメリカ文化センター主催の現代アメリカ音楽演奏会が催された。これはアメリカ音楽文化の紹介を主としている演奏会であった。曲目にはジョン・ケージの作品もあり、演奏家にはアメリカが誇る現代音楽スペシャリスト・ピアニスト、チューダーも来日していた。 ヨーロッパ文化とは一味違うアメリカ文化の現代音楽が、無料で聴くことが出来た。私は中学生のころからジョン・ケージのプリペアードピアノ(ピアノの内部に消しゴムや鉛筆キャップを入れてピアノの音色を変化させるもの)を知っていたので、チューダーのピアノ演奏には驚きはなかったが、多くの日本人はこれが音楽であるかと驚いていた。

 当時日本の現代作曲家には武満徹や一柳慧、湯浅譲二などがいた。
オールナイトのコンサートは若者で溢れていた。
これが1960年代の日本の現代音楽シーンであった。こうした状況を知らないとジョン・ケージの『易の音楽』にたどり着くのは難しい。




ケージ:易の音楽 (1951) 
1956年WDRが収録した衝撃の世界初録音音源

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      (アマゾンではMP3がアルバムでダウンロード可能です)

HMVへのリンク
     (現在品切れ中)



 ケージが歴史に刻んだ問題作の1つ、『易の音楽(music of changes)』のチューダーによる世界初録音音源の登場!というCDである。

  『易の音楽』は、太古から行われてきた占いを体系的にまとめた東洋の書「易経、もしくは変化の書」に載っている占いの表を参考に作曲された作品。様々な音素材(単音、重音などの最小限の単位。これは易によって割り出されたものではなく、ケージ自身の作)の組み合わせや、各セクションのテンポなどを、一回一回コインを投げて決めていく。音楽はその都度変化してゆく。チャンスオペレーションとも呼ばれた。チャンスオペレーションの作曲手法はその後現代音楽の手法としてよく使われた。

 さらにそうして組み合わされた素材が実際にピアノで演奏できるように適宜ケージが手を入れるというなんとも手の込んだ作品。
結果、極めて複雑な音とリズム構造をもつ作品となっており、現代音楽の名手チューダーも相当苦心して、ストップウォッチなど照らし合わせながら楽譜を読み込んでいったという。


 世界初録音をつとめたのは、アメリカが誇る現代音楽スペシャリスト・ピアニスト、チューダー。
チューダーは『易の音楽』の初演者であり、また、ブーレーズのピアノ・ソナタ第2番を1950年にアメリカで初演し、あの有名で物議を起こしたケージの『4分33秒』を1952年に初演した人物でもある。

 新しい音楽の誕生の場に居合わせた人々が発する熱気と緊張感に満ちた素晴しい演奏。音楽的に素晴しく、歴史的にも非常に貴重な音源といえる《易の音楽 (1951)》である。

 21世紀に入ってこのような音楽は、衰退の一途をたどることになる。現代音楽は「混迷」とも「カオス」ともいえる状況である。
 ではなぜ現代音楽に興味を示すのかというと、一口で言えば「人間の音楽創造の現場」を現代にいることで垣間みる事ができるからである。創造とは何かという哲学的な課題に対する挑戦である。遥か昔に出来上がった音楽のみを鑑賞している人には興味のないことであると思うが。

 

【収録情報】
ケージ:易の音楽 (1951)

 デイヴィッド・チューダー(ピアノ)

  録音時期:1956年11月
録音方式:モノラル(セッション)
WDR HISTORIC FIRST RECORDING
マスタリング:2012年








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