【Z・CD特別情報9】
正統派と異端児
~チェンバリスト・中野振一郎の世界~
音楽には保守・正統派と異端とが同居している。チェンバリスト・中野振一郎はこの二つを併せ持つ不思議な日本の演奏家である。彼のCDは20枚ちかく出ているだろう。私がこの青年(1964—京都生れ)に興味を持ったのは30年ほど前のことであった。
チェンバロで『スコット・ジョプリン』を弾いたCDに出会った時であった。これが今日の一枚。
イージー・ウィナーズ/中野振一郎
(録音・演奏Aクラス)
http://tinyurl.com/h5dxz5r
収録曲
チェンバロでラモー、クープラン、バッハ、などを弾くのなら正統派である。スコット・ジョプリンを弾くのは異端児である。ところが見事にチェンバロの演奏にスコット・ジョプリンの音楽がはまっているのだ。
- ハーモニー・クラブ・ワルツ
- クレオファ
- ザ・ストレニュアス・ライフ
- ソラース・メキシカン・ライフ
- ジ・イージー・ウィナーズ
- ザ・クラッシュ・コリジョン・マーチ
- ザ・“ボストン”トゥ・ステップ
- 52nd・ストリート
- ブッティン・オン・ザ・リック
- ザ・ラグタイム・ダンス
- オリジナル・ラグズ
- ベシーナ〜コンサート・ワルツ
- ジ・エンターティナー
こんなことをやる演奏家はどんな奴かというところから、彼との交友がはじまった。その後、私がプロデュースするNHKの番組に彼はたびたび出演した。
彼のCDはほとんどがDENONから出ている。録音は凝りに凝っている。
チェンバロは弦を爪ではじく楽器である。だからピアノのように大きな音は出ない。DENONはこのチェンバロの音を見事に録音している。最初の音が出るとチェンバロの姿が甦る。自分のオーディオがこんなにも上質であったかと再確認するほどオーディオ向きの楽器と言えるだろう。
異端児・中野振一郎は、その後「ウィーン気質〜ヨハン・シュトラウス名曲集〜」や、「ウィーンへの夢」などウィーンに関連したCDも出している。
これはオペレッタ「ウィーン気質」、オペレッタ「ジプシー男爵」
オペレッタ「こうもり」からの抜粋・編曲である。
クラシック・ファンにはなじみの曲が、チェンバロで演奏されるとこんなサウンドになるのか、と不思議な雰囲気になる。 どれも演奏・録音ともにAクラスである。
ゴルトベルク変奏曲
(録音・演奏Aクラス)
http://tinyurl.com/jecdmy4
正統派の中野振一郎をお聞きになりたい方は、「バッハのゴールドベルク変奏曲」をお勧めする。これはデビュー20周年を記念して再録音されたCDであり、演奏家としての成長を感じさせる演奏である。
もし、音楽に異端がなくて正統ばかりであったなら、音楽は長く生きながらえることができたであろうか。きっと死滅してしまったに違いない。
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