【Z・CD特別情報 2】
弦楽四重奏の楽しみ
~ハーゲン四重奏団の至芸~
このCDを取り上げた理由は、ウエーベルンの「5つの楽章 作品5」 「6 つのバガテル 作品9」が収録されていたからである。
http://tinyurl.com/nsosyfa
SACD ハーゲン弦楽四重奏団(演奏・録音ともにAランク)
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番 作品59「ラズモフスキー」 モーツァルト:弦楽四重奏曲第16番 K.428
ヴェーベルン:5つの楽章 作品5 6つのバガテル 作品9
ウエーベルンなんて聴いたことのない作曲家だというでしょう。私のCD紹介 は単に「話題のCD」だから、とか「音が良いから」といった観点からだけの CD紹介ではありません。勿論それもあります。しかし、知らないことに興味 を持っていただいて読んでいただければ、なにかひとつ得をしたことになるよ うなCD紹介なのです。
さてウエーベルンは「新ウイーン楽派」、つまりシェーンベルク、ベルクに 彼を加えた三人の作曲家集団の一人なのです。 新があるのだから、「元祖」があります。元祖「ウイーン楽派」とは、ハイ ドン、モーツァルト、ベートーヴェンのことです。そう説明すればある時代に ウイーンを中心に活躍した作曲家を音楽史ではそのように呼んでいることがご 理解していただけるでしょう。
ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの三人は何となく理解はできても、 「新ウイーン楽派」とはなんぞやとなります。音楽史では古典派、ロマン派に 「続く世代の一つ」に、「12 音技法」を駆使して作曲を試みた世代を「新ウイ ーン楽派」と呼びます。簡単に言えばピアノの鍵盤の「ド」から「シ」までに は白鍵・黒鍵あわせて12の音があります。この12の音を繰り返すことなく 音のつながりとしてとらえ、これをセリーとして12種類つくり、そしてこれ を駆使して作曲する技法を「12音技法」といい、シェーンベルクが考え出し、 この作曲技法に共感したベルク、ウエーベルンの三人がウイーンで20世紀前 半に活躍したのです。なんでこんなことになったかは説明が長くなるので割愛 します。
とりあえず、ベートーヴェン、モーツァルトをとばして、ウエーベルンを聴 いてみてください。 これが音楽と思えない方も少なくないでしょう。音楽の哲学、つまり音楽美 学の観点からすれば、「音楽とはなんぞや」という問いに一石を投じた作品で あることに間違いないでしょう。
私は東京芸術大学で都合6年間このウエ―ヴェルンを研究し修士号をとりま した。世の中にはこんな物好きもいるのです。一見無駄な研究が役に立つ時代 もあるのです。 21世紀にはいり「現代音楽」という領域はいまだ定まった定義はありませ ん。しかし、こうした作品が「現代音楽」の源流となっているのです。
現代の作曲家は創作のモチヴェーション、つまり動機づけに混迷しているの です。「広島の悲劇」を題材としたレクイエムもあるでしょう。ジョン・ケー ジのようにつきつめた「音楽美学」もあるでしょう。
ウエ―ヴェルンに留まるのはこれくらいにして、話を弦楽四重奏に戻しまし ょう。 ハーゲン弦楽四重奏団(Hagen Quartett)は、モーツァルテウム管弦楽団の 首席ヴィオラ奏者オスカー・ハーゲンを父に持つ 4 人の兄弟(ルーカス・ハー ゲン、アンゲリカ・ハーゲン、ヴェロニカ・ハーゲン、クレメンス・ハーゲン) によってオーストリア・ザルツブルクで結成された弦楽四重奏団です。(途中 メンバーの変更あり) 2011 年、結成 30 周年を機にドイツ・グラモフォンから、ドイツの myrios classics レーベルに移籍。録音はドイツ・グラモフォンよりはるかに鮮明で、 各楽器のパートのディテールは驚く物がある。
myrios classics レーベルには他のCDには下記のものがある。 参考のために。演奏・録音ともにAランクである
飛ばしたベートーヴェン、モーツァルトはどうですかって。ドイツ・グラモ フォン時代から、ハーゲンには注目していました。弦楽器(特にヴァイオリン・ ヴィオラ)には「あげ弓」と「さげ弓」があります。オーケストラでは各パー トはこれをそろえています。アマチュアのオーケストラを除けばプロのオーケ ストラは皆さんそろっています。どのように合わせるかはコンサートマスター の仕事の一つですが、音楽の表現は「あげ弓」と「さげ弓」で微妙にかわって きます。なぜ変わるかって。原理的には「あげ弓」は弓の根本にくるに従って 音量が増します。「下げ弓」は弓の先端に行くほど音量が小さくなります。勿 論プロの演奏家はこのようなことが起こらないようにコントロールします。こ の微妙なコントロールが同じ場所で勉強したハーゲン弦楽四重奏団は、気持ちが良い程そろっているのです。
是非もう一枚聴いてください。
ベートーヴェン(1770-1827)SACD
http://tinyurl.com/ptgbsqq
弦楽四重奏曲第3・5・16番 ハーゲン四重奏団(2012)
弦楽四重奏については、これからも取り上げますので、いずれまたふれる機会 があるでしょう。
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